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【小説】「公衆便所男④」

 そこで私を待ち受けていた運命は、極めて残酷なものだった。

 そのトイレは、何の問題も抱えていないように思えた。清掃も行き届いている。トイレットペーパーもふんだんにある。理想的な状態だと思った。
 私は安堵の溜息と共に、ズボンを下ろそうとベルトに手をかけた。

 が、何か嫌な予感がする。どこかに違和感を感じるのだ。
 それはどこだろう?私は自問自答してみた。そして、あることに気付いた。
 便座の蓋が閉じているのである。(つまり、このトイレは洋式であった。)嗅覚を研ぎ澄ましてみると、芳香剤の放つキンモクセイの香りとサンポールの塩素臭に混じって、微かに異臭がする。その異臭は、明らかに蓋と便座の間にある、わずかな隙間から漏れてきているのだった。
 無論、以前の使用者がひり出した排泄物の【残り香】は、公衆便所の宿命である。こればかりは受け入れざるを得ない。だが、この臭いはどこかが違っている。
 臭いが新鮮すぎるのだ。この臭いは【残り香】などではない、この臭いの持つ新鮮さは、ウンコそのものでなければ発することのできない類のものだ。

 
 恐る恐る、私は蓋に手をかけた。
 その先で、私が見たものは――――――――

 
 ウンコであった。
 とてつもなく巨大なウンコが、便器の中でトグロを巻いていた。産み落とされてから数時間は経過しているのであろう、ウンコは水に溶解し始めており、これまた大量のトイレットペーパーと共に混ざり合ってブラウン運動を始めており、カオスを形成していた。
 流れなかったのだろう。便の質量があまりにも大きすぎ、何度「流す大」ボタンを押しても流れてくれなかったのだ。そして焦り、どうしていいかわからなくなり、最終的に放置したのだ。
 私はまたも失意のどん底へと叩き落された。
 ウンコの落とし主に問いたい。
 何故こんな量になるまで溜め込んだのか?もっと迅速に、かつ頻繁にトイレへと足を運んでいれば、このような災難が私の身に降りかかる事はなかったのだ。
 加えて何故蓋を閉じてしまったのか?「臭いものにはフタをしろ」という、日本古来の諺に習ったとでもいうのだろうか。まったくもって余計なことをしでかしてくれたものである。蓋を閉じてしまったせいで発見が遅れたのだ。蓋さえ閉ざされていなければ、この巨大ウンコはもっと早く発見され、迅速にスーパーマーケットの最高責任者へと報告され、早急かつ適切な対応策が取られていたに違いないのだ。
 
 恥ずかしかったのか?
 巨大なウンコを堂々と放置したまま立ち去ることが、どうしてもできなかったのか?だから蓋を閉じたのか?
 蓋を閉じたところで焼け石に水だ。応急処置にさえならぬ、場当たり的で悪質な措置である。蓋を閉じたところで、かのような巨大なモンスターウンコを産み落とし、放置したという事実が消えるわけはないではないか。
 私は最早怒りを通り越して情けなくなり、目から自然と涙が溢れ出してきた。

 と、その時である。


 【Hello!!!!山下☆だヨ~ん!!!!調子どう!?俺は最高!!!】


 またも山下の名前が目に飛び込んできた。ステンレス製のトイレットペーパーホルダーの上に油性マジックペンでHello山下の名前が書き込まれていた。
 どれだけ私を愚弄すれば気が済むのか。舐めているのかこの男は。何が「調子どう!?」だ、良いわけがないではないか。よもやこの巨大便もこの男の仕業なのか?許せない。この男だけは絶対に許せない。 
 
「Hello山下…!!必ず見つけ出して成敗してくる・・・!!!」

 私は右手の拳を強く握り締め、そう口にしていた。
 こうして私は、第三の便所を後にした。


                      (続く)   文責:魔王源

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Hats off to whoever wrote this up and potsed it.

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2008年09月27日 23:55に投稿されたエントリーのページです。

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